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今期授業最終回:これからの教師「あいまいさの中で決めて進む。それで振り返る。前向きに悩み続ける。自分にとって大切なものを探し続ける。」


半年間対話し続けてきて,前期最後の授業。

私にとっても学びが多くて,この授業,というかこの空間や院生たちに出会えて幸せだったと思える授業だった。

岡田行雄先生とのTT.
キーワード(よく出てきた言葉)は「受動的な教師(になりたくない)」「あいまいさに耐える」「前向きに悩む」

===対話の記録===

・・・色んな教師にあったり話を聞くことが増えて感じたこと。自分では決めずに,環境や政策に愚痴を言い続ける。そういう受動的な教師にはなりたくない。

決めて欲しい人もいるのかも?

確かに,自分の思い込みや興味だけで前に突っ走っていける仕事でもないから,わかるところもある。最近聞いた言葉で,いいなと思った言葉。「あいまいさに耐える。」
この授業で話してきた通り,私たちが目指す仕事の中にはたくさんの葛藤がある。あいまいさもある。でも,逃げずにそういう場に立ち続ける仕事なんだなと思う。

確かに良い言葉だけど,あいまいななかでただ悩むだけでいいわけじゃないよね。僕は,あいまいさの中で,悩みながら,決めて,行動しなきゃならない仕事でもあると思う。

そうだね。誰かに決めてもらってそれをこなすという受動的な教師になると楽だけれど,あいまいさに耐えながら,前に進む教師でありたい。抽象的だけど。
決めてもらったら楽だけど,そういう姿とか見ていると「結局,あなたは何を大切にしたいの?」と思ってしまう。

どういうこと?

目の前にいる子たちにとって大切なものは何か,なんだけれど,それを自分がどう捉えて,どう考えるか。が問われると思う。授業でも出てきたけど,「3分に1回決断する」仕事では,結局,自分が出ちゃう。だから,自分が,問われる。だからこそ,自分と向き合いながら,どうありたいのか,どうあればいいのかを探し続ける。

それは,私の言葉で言うと,前向きに悩み続ける感じ。「2030年の教師」的に変化する未来を正確に予測することはできないけれど,今ある場所で,悩み続けながら,未来に向かって前向きに進むしかない。悩んでやらないとかじゃなく,前向きに進みながら悩む。

私にとっては,あいまいさのなかで,試行錯誤して考え続ける,というイメージ。

その変ってこれに近い?(学習指導要領の答申)・他者と対話して協働しながら,自分を振り返る。・試行錯誤しながら,自ら気づき,変わっていく。実は学習指導要領で目指す姿?教師も,子どもたちと目指すものも近い?

確かに。書いてある。
ただ,学習指導要領について気をつけないといけないのは,指針も方針もあるけれど,それを盲信していいとも思わないし,これを読んでも「はいそうですか」とはなりづらい。

とすると,学習指導要領が出ても変わりづらいのか。じゃあ,どうすりゃいいのかな。

結局,自分で考える。「書いてあるから」ではなくて。
さっき出てきたこと。あいまいさの中で決める。ほんで振り返る。前向きに悩み続ける。自分にとって大切なものを探し続ける。的なことなんだと思う。

===以上===

ポエムっぽいし,抽象的だし,話としては飛び飛びでもある。でも,半年の議論や対話,実習での経験や相談をふまえたなか,お互いのことを分かってきたなかでの言葉だから,地に足がついている気がした。


彼ら(ストマス院生)がリアルなあいまいさや葛藤に出会うのはこれからかもしれないし,即戦力を求められるなかで苦しむかもしれない。でも,この授業の中で出会った言葉や,彼ら自身が発した言葉は,そういう時にも立ち戻ったり,振り返ったりできる言葉,かもしれない。(美化しすぎかな)


なにより,自分にとって,自分を問い直す場だった。ありがたい出会いだった。

と,ひとまず今は思えるような場だった

教職大学院生(現職院生)が研究をやる意味は何なのか

教職大学院生が課題研究(修士研究のようなもの)をやる意味は何なのか
すでに現職として働いている社会人が,研究者になるわけでもない(なる人もいるが)のに研究をやる意味は何なのか

それを整理して語る機会をいただいたので,せっかくなのでブログに記録を残しておくことにしました

そもそもの前提として,教職大学院には様々な現職院生がいる

自ら希望してきた人と,希望したわけでもなく,配置されてきた人がいる。
向き合いたい課題を自ら持っている人もいれば,やるべき課題を誰かから決められて任務として与えられている人もいる。
この期間を通じて何らかの問いや課題にとことん向き合いたいと思っている人もいれば,そんな気もなく,突然,「課題研究」とか「論文」に無理やり向き合わされている人もいる。

それぞれの後者の人が,少なくとも一定数はいる。

加えて,我が大学院の課題研究の負担はそれなりに重く,100ページかそれ以上のものを書く。
教職大学院の中でくらべれば,扱いが重い方(だと思う)で,修論に近いかもしれない。

なぜこんな大変なことをやらされるのか,という思いを持つ人はそこそこいる。
であるからこそ,その意味はどこにあるのか。
そこをきちんと考える機会を持たねば,消化不良のまま重たい荷物を背負わされる(背負わせる)ことになってしまう。

そんななか,課題研究を行う「意味」のようなものを語れる機会をいただいた。

正直,突然の機会だったので,最初は気乗りしなかった
その担当が降ってきたのが,実施の2日前(プチ愚痴)
その前の会議では主担当ではなかった(プチ愚痴)
むしろ,重たい話題で,押し付けられたんじゃないかという気さえしていた(プチ愚痴)

そして,私自身は研究の話をするのが苦手である。なぜなら,研究が下手だから。笑(プチ自虐)
その講座の前日にも「町支くん,ロジックが通ってない」というお話をいただいたばかり。笑(プチ自虐)

そんな私が研究の話をした(プチ自虐)

でもまぁ,結局,やってみた感想としては,やってよかったと思っている

院生の現状は,基本的に,「研究って何?」という状況。
コロナでこれまでまともに研究についての話ができていない。
学校で行われる校内研究のイメージで課題研究をとらえているひとも多い。

というわけで,まずは,研究全体の構造の話。
そして,ロジックの話。ロジックの苦手な私がロジックの話をした。
問いへの「絞り方」の話。
実践や調査の話。評価や分析の話。
途中途中で,自分の問題意識を語ってもらいつつ,それを「研究」にしていくのはどうするのか,そんな相談会っぽい機会も入れてみた。

現職院生の方々からはいろんな疑問が出た。
これまでの相談の機会でもあったのだけれど,「やりたいことを自由にやらせてくれる機会」だと捉えている方も多い。

もちろん,それはやればいいのだけれど,課題研究という枠組みのなかで行うことは,それとは異なる。
自分の「やりたいこと」を,「社会にとっても意味のあることか」「理論的にも意味のあることか」という視点で見つめ直すのは,結構苦痛だ。
私自身,大学院に行った当初,そこで苦しんだ。

大学院の他の先生方のお力も借りながら,そんな思いを受け止めつつ,研究の意味の話に移行していった。

「この研究をすることが皆さんにとってどう言う意味を持つか」について考える機会をとった。

いろんな話は出たが,「自分のやりたいと思っていることを,他人にとっても納得できる形で伝えること」という語りが印象的だった。

もちろん,制度上の意味もあるし,これまで言われてきたもろもろもあるけど,一年半見てきて私なりに思ったこと・伝えたこと(伝えたかったこと)は以下のようなことだった。

=====

①<研究の前半で経験することは>自分のやろうとしていることが…

・世の中から見ても重要か
・これまでに行われてきた実践や研究の視点から見ても重要か
・(自分だけでなく)自分の身の周りの状況から見ても重要か

を,何度も何度も何度も何度も検証すること

>少し抽象的に言えば 自分の踏み出す一歩が意味のある一歩なのかを多様な視点から検証する こと

=====

②<研究の後半で経験することは>自分のやったことが…

・本当に意味や効果をもたらしたのか
・自分の主観だけでなく,他の視点から見ても意味や効果をもたらしたのか

を,検証していくこと

>少し抽象的に言えば 自分が踏み出したつもりの一歩が,本当に踏み出せていたのか,そして本当に意味があったのかを様々な方法で検証する こと

=====

③研究する経験は,どんな意味を持つのか。
(町支なりの考えです。これから皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。)

【我武者羅に一歩を踏み出していく】ことも大事です

でも,【意味のある一歩を踏み出していく】ということも大事です。

この場では,自分とも社会とも向き合いながら,【自分の一歩】を徹底的に検証して,意味ある一歩を踏み出すための方法や実践を経験(=研究)します

今後の人生やキャリアにおいても(研究できる/できないはあっても)その姿勢や見方を持っていること自体は皆さんにとって有意義だと考えています

=====

というようなことをお伝えした。

授業後に何人かの院生が話に来てくれたので少しお話した。
その感じでは,深く受け止めてくれた人もポカンの人もいそうだったけど,少なくとも研究のことを考えるきっかけを与えられたようではあった。

最初は,プチめんどい気持ち(あくまでプチ)だったけど,一度このことは自分の中でも整理したいと思ってたので良かった。

人によっていろんな視点や意味や言い方はあるだろうけど,自分なりに腹落ちできるものは自分として持っておきたかったので,それを考える良い機会になった。

そして私自身も,この考えを捉え直し続けながら,現職の先生達と関わりながら,生きていくんだと思うし,そうやって生きていきたい

【動画】働き方研修プロジェクト:巻き込み×データ対話による86校での実践を目指して

横浜市教育委員会とともに、3年間の働き方プロジェクトを進めてきました。
1年目は実態調査、2年目はモデル校実践、3年目は研修を通じて86校で実践。

この3年間の中で、私たちのプロジェクトが重視してきたのは、「自分たちの働き方を自分たちで決める」ことです。

なぜこれを大切にしてきたか。

働き方は、最後は個人に帰結します。
どんなに無理やり「定時退勤だ」と言われても、結局「帰れない人」「帰りたくない人」「帰った形で別の場所で働く人」を生んでしまいます。
それどころか、「帰れ」という側(言う側もどこか無理をして言っていたりするかもしれません)と「はいはい」と動かされる側に嫌な空気さえ流れる。
結局、腹落ちしないで押しつけられた定時退勤も、部活動休養日も、資料共有も、様々なルールも長続きしない可能性が高いです。
決めたルールも使おうと決めたシステムも、ちょっとずつゆるくなっていく、曖昧になっていく。
つまり、「ウヤムヤ化」が起きます。

だからこそ、「自分たちで決める」なのです。

以下の雑誌記事には、先日の成果報告会の様子が記されていますが、記事の中にこんな文言があります。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17938

”「『自分たちの学校にとって必要だ』とみんなで話し合って決めた改革案を途中で投げ出すわけにはいかない」”

それぞれが自分ごとと思って働き方改革に向き合われたからこその言葉ではないかと思います。

しかし、”「自分たちで決める」と言っても、「自分たちの中から」多様な意見が出て、結局何も決められないんじゃないか、何も変えられないんじゃないか・・・”
確かに、そうなり得ます。
我々もそれを危惧しました。

だからこそ、私たちは目的の共有と、対話、意思決定にこだわりました。
つまり、「決め方」です。
データを用いた対話と、ワークショップ的な手法を活用しました。
詳しくはこれから論文等で示していく予定です。

※決め方の「一端」は、下記の書籍に書いています。
スクリーンショット 2019-02-07 3.57.25
データから考える教師の働き方入門(毎日新聞出版社)

1番のポイントは、「みんなでワークショップをおこなって決めていく」ことです。
ただ、丸腰でそれを行っても上記の懸念のように、「決められない」かもしれません。
だからこそ、「その対話を可能にする」ためにデータを用いるわけですし、
「意思決定の質をあげる」ためにデータを用いるわけです。
そしてそして、これらの取り組み全体を実現可能にするために
「プロジェクトチームを組む」わけです。

と言ってみても、詳細は伝わらないと思います。笑
その辺りについても、これからアウトプットしていきたいと考えています。

最初に書いた通り、2年目はこの実践をモデル校で行いました。
我々も学校の中に入って、一緒に行いました。
そして、3年目は、それを86校で実践する、という取り組みを行いました。

この実践、モデル校に我々が入って一緒にやるとき(2年目)でさえ、それまでの学校との共同実践に比べて、難易度【1000】倍くらいでした(当社比)。
ですが、これを86校で行うのは、さらに難しかったです。
難易度【243117】倍くらいでした。

「86校で行う」というのはどういうことかというと、つまり、新任校長研修を通じて、上記の取り組みを各校で運用できるよう、86人の校長先生を支援した、ということです。

後で挙げている中原先生のブログでは、この取り組みを下記のように表現しています。
===
1. 管理職をチェンジエージェント(変革の中心人物)とした働き方改革のプロジェクトを組織してもらう
2. その(各校での:町支注)プロジェクトでは、サーベイフィードバック型の組織開発の手法を用いながら実施してもらう
3. 1と2をうまく組織化するアクションラーニング型の研修を実施する
===

なんのことやら、伝わったかどうかわかりませんが、前述の、みんなで決めていく型の取り組みを推進していけるような、その推進担当者として校長先生に対する研修を行なったということです。

正直に言って、かなりハードで繊細な研修でした。
いつ火を吹くかわからない。
そんな研修でした。

働き方の研修と言っても、「考え方」を示して実際の進め方には言及しない、
「施策の事例」はたくさん示すものの実際の進め方には言及しない、
あるいは、「施策の事例」を「これが正解だ」みたいな形で強制するもの、
そういう研修って結構あると思うんですよね(自戒を込めて)

最終的にやった施策を見せられるってのは、試行錯誤した結果のみを見せられるようなもので、
実際の肝はそこに至るまでの道中にあると思うんですよね。
でも、大抵の研修は、そこの前だけか、あとだけで、実際の進め方は見えてこない。
わからない。(まぁこれは、働き方の研修に限らないと思います。)

そんな研修、そこそこまぁまぁありますよね。(自戒を込めて。2回目。)

そうならないために、どうすればよいか、ものすごく頭をひねって考えました。
研修でこの実践をすすめるということは、上記のデータを用いた対話と、ワークショップ的な手法を、我々ではなく校長自身(もしくは校内の誰か)が行うということになります。
その当事者たる校長先生方を、研修を通じて支援した、というわけです。

データの使い方は、間違うとすぐにオジャンです。
データは、その話者のトークを補強するだけの、棍棒にもなり得ます。
そんなもんでぶっ叩いても、何も組織は動きません。
いかにデータを扱うのか、そこを丁寧に丁寧に考えていきました。

ワークショップも、推進者側の独演会になってしまえば、皆を巻き込むことはできません。
場合によっては炎上してしまう可能性もあります。
そうなれば、校内には働き方改革に対する諦めが広がってしまう。
それはなんとしても避けなければなりません。
教職員の方々が自分ごととして働き方を考えられるような、そんなワークショップについても校長先生の皆様と考えてきました。

データや対話だけではありません。
この研修では(研修内ではそういう言い方はしませんでしたが)組織開発や組織変革の知見を様々に援用しました。

一歩一歩、スモールステップで進めながら、86人の校長先生と進めてきました。
繰り返しになりますが、こんなにハードで繊細な研修は初めてでした。。。

※これらについての詳細も、今後アウトプットします

そして、この取り組みは、3回の研修のみで達成したわけではなく、
進め方等を各校内で共有するためのDVD、校内で調査を行い結果のグラフ化を自動で行うためのシステムなど、様々なツールを用いました。

DVDは今、youtubeにあがっています。
是非見てみてください。(下記の画像をクリック)

スクリーンショット 2020-02-18 10.48.30

これらの取り組みおよびDVDについては、中原先生のブログでも紹介されています。
NAKAHARA-LAB:働き方改革を「熱量アゲアゲ・現場ポットンモデル」や「詰め込み・ポットン・祈るモデル」で行ってはいけない!:現場に「対話」を促すための「働き方見直し・ビデオ映像」大公開!

このDVD作成については、中原先生もさまざまな思いが・・・
(詳しくは先生のブログ↑ご覧ください)

さて、長くなってしまいました。
横浜市との取り組みは、当然、我々(中原先生、中原研辻さん、私)だけで進めたわけではありません。
横浜市教育委員会の山本朝彦さん、飯島靖敬さん、柳澤尚利さん、山内裕介さん、野口久美子さん、根本勝弘さん、立田順一さん(現・緑園西小学校)、外山英理さん(南吉田小学校)、松原雅俊さん(横浜国立大学)らと3年かけて企画してきました。
みんなで、本当に、本当に、頭をひねって考えてきました。

そして、その結果、どんな成果がでたのか。
そういったあたりも含めてこれから論文等でアウトプットしていきたいなと思います。
このブログは、そのための決意表明みたいなものです。

というわけで、最後は書くぞー宣言で終わりたいと思います。

3、2、1、書くぞー。

オランダ視察

ツイッターより。
オランダの学校を院生(現職&ストマス)と見てきた。今回はこれまで以上に充実した視察になった気がする。

視察後には長時間の対話を行った。次のような対話が行われていたと感じた。
①実践を自分の現場で活用できるか考える
②実践内容やそこにいる人から、価値観を感じとり、その価値観を自分の現場で体現しようとしたらどうなるか考える
③異質なものを見る時に、自分の視点がどれだけ経験に縛られてるかを体験する
④↑を乗り越えるために、その現場で感じた事実(例、フィールドノート)に立ち返ったり、他者との感じ方の違いについて考えることを通じて、何度も「本当か」「何故か」と問い続けること。
③④の対話をする姿は、国内ではあまり見られてこなかった。異質なものに触れ、非日常の場にあり、集中的に対話の時間がとれたこと。これらの条件が揃えられたからこそであり、海外に来ることでこれらは実現しやすくなる。
対話までの間に自由時間があったのもよかった。集団行動してると、集団内の熟達者の発言にひっぱられる。
自画自賛っぽくなっちゃうけど,とにかく,今回の視察は学びが大きかった。詳細はまた今度。

https://platform.twitter.com/widgets.js

【本日発売!】「データから考える 教師の働き方入門」

今日、2/28は「データから考える 教師の働き方入門」(辻和洋・町支大祐編著、中原淳監修)の発売日です。とうとう出ました(涙)。

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本書「データから考える 教師の働き方入門」は、横浜市教育委員会×中原研究室の共同研究「持続可能な働き方プロジェクト」の研究成果をベースにしています。このプロジェクトでは、横浜市教育委員会の教職員育成課のみなさまとともに、学校の働き方調査や、働き方の改善に取り組んできました(教職員育成課のみなさま、ありがとうございます!)。

※(参考)このプロジェクトに込めた思いについては以前、ブログに書きました
https://cdai80.wordpress.com/2019/02/07/%E4%BA%88%E7%B4%84%E9%96%8B%E5%A7%8B%EF%BC%81%E3%80%8C%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%8B%E3%82%89%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E6%95%99%E5%B8%AB%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9%E5%85%A5%E9%96%80/

本書の特徴の一つは、タイトルにもある通り、データを用いていることにあります。例えばこれ、

●休憩時間に休憩できてない教員99.6%

休憩時間に休憩できてない教員99.6% 。休めてるのは0.4%のみ。さらっとすごい数字が出ています。

近年、たくさんの行政調査などが行われ、過労死ライン以上は●●%といった数字は、繰り返し出されています。本書は、そういった質問も行なっていますが、それに加えて、働き方や職場に関する先生方の「認識」もたずねています。それらをクロスすると、例えばこんな調査結果も見えてきます。

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教員がどうしても長く働いてしまう原因の一つ(他にもたくさんありますが、そのうちの一つ)には、「不安」があるのではないでしょうか。特に若い人に多いかもしれません。明日の授業が、明日の学活が不安。生徒は待っているのに準備ができていない。準備不足で右往左往してしまう自分を想像して不安。だから、「できうるかぎり」の準備をしてしまう。そんな不安が長時間労働を生んでしまうのかもしれません。

こういったように、データを通じて、「なぜ長時間労働が起きるか(2章)」あるいは「長時間労働を改善するには(3章)」といった点について、様々な切り口からデータを通じて考えています。

もう一つの特徴は、ストーリーを大切にしている点です。データは、その数字だけでは何も語りかけてはくれません。その背後には人がいて、働き方には一人一人に物語があります。そういった一人一人の物語に思いを馳せてこそ、はじめて数字に意味が出てくるのだと思っています。我々は、そのメッセージを序章と5章(対談章)に込めました。

序章では、複数の匿名の教員に寄り添って、働き方のストーリーを編んでいます。ここでは、辻さんの文章力がふんだんにいかされています(プロフェッショナル!!)。

●序章

 

また、5章では、中原先生と三人の先生方の対談があります。岩瀬直樹さん、杉本直樹さん(ダブル直樹さんだ!)、住田昌治さんにお話をうかがっています。3名の方々がこれまで働き方についてどんな経験をされてきたか、そして、働き方の改善が進んだ先にはどんな学校や教師がありうるのか、といった点について語っていただいています。それぞれの先生にしか語っていただけないことも語っていただけたように思います。ここの章を読むためだけに買っても惜しくないくらいだと思います(自画自賛ですみません。でも本当に面白いです)。

●対談

5章には、あわせて特別対談があります。横浜市で教員の働き方改革に取り組んでいる二人の課長(立田順一課長、島谷千春課長)にお話しいただいています。これがまた、”他では聞けない話”が色々あって面白い。行政の方としてギリギリのところまで語ってくださっているように思います。一方で、もともと現場にいながら、あるいは、もともと文科省にいながら、今は教育委員会の一員として学校現場に働きかけることへの迷いや難しさのようなものも滲み出ていて、「なるほどなー、行政にいる方はこういう風に考えているのか」と考えさせられるところがたくさんあります。

さて、データとストーリーという2つの特徴を見てきたわけですが、もう一点、本書で大切にしてきた点があります。それは、「組織で取り組むことも視野に入れている」という点です。もちろんどのように働くか、ということは、個人に原点がある問題です(個人の働き方に関するデータやストーリーももちろんたくさん取り扱っています。)しかし、学校として業務の一部をやめたり、というところまで踏み込んでいくことを考えるならば、働き方の改善には「組織」で取り組むことも視野に入れてとらえる必要があると考えています。

これは同時に、働き方の改善に「それほど積極的でない」先生や、「迷いを感じている」先生も巻き込んでいく必要がある、ということを意味しています。本書は、そういった先生にも読んでいただける本、そして、読んでいただきたい本です。また、そういった先生方を「巻き込みたい」と思っている方にもぜひ読んでいただきたいと思っています。
働き方改革に対して、迷いや葛藤を感じるのは、ある意味当然かもしれないと思っています。数年前までは、今の働き方改革の流れとは異なり、とにかく時間や労力をかけることは単純に良いこととされてきました。それが急に変わってきたことにとまどいを覚える人もいるのは当然です。そういったことを考えると、働き方の改善をすすめていくうえで感じる「モヤモヤ」は、どこかで一度整理してみることも必要ではないでしょうか。それらを整理したうえで、それでも進めていくべきなのかどうかを考える。そのステップをふまずに「世の流れだから」ということで推し進められても、なかなか「腹落ち」して働き方改革を進めることはむずかしいのではないでしょうか。
1章では働き方改革が求められる背景や、働き方改革に感じるモヤモヤのどちらにもスポットライトをあてています。

例えば、もやもやの原因①

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また、本書自体が、働き方改革に積極的な先生と、働き方改革に迷いを感じる人と、そういった方々の対話のきっかけになったらいいなとも思っています。様々なデータは、双方にとって意外な点や、「あるある」と感じられる点も多いように思います。本書のデータを対話の「素材」にしていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

ここまで書いてきたコンテンツを含め、本書は以下のように展開していきます

序章:教員の働き方についてのルポ
1章:働き方改革についてのモヤモヤと、働き方改革を行う背景
2章:データから考える教員の働き方のリアル
3章:データから考える教員の働き方改善のヒントと進め方
4章:働き方改善のための具体的な打ち手
5章:対談

どこからお読みいただいても、参考にしていただけるところがあるかと思います。
ぜひ、お手にとっていただけたら幸いです。
ポチっとしていただけたらさらに嬉しいです(笑)
アマゾン等、もう一度あげておきます!

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最後になりますが、本書のベースとなったプログラムは、横浜市教職員育成課のみなさまとの共同研究です。大変お世話になりました(本日も一緒に研修ですね!笑)。特に、本書にも執筆協力いただいた立田順一課長や柳澤尚利主任指導主事には、夜のカフェで最後まで原稿チェックをともにしていただいたこと、忘れません。また、執筆のプロセスのすべてについて、毎日新聞出版の久保田章子様に後押しいただきました。ありがとうございました。再度になりますが、対談にご参加いただいた、岩瀬直樹先生、杉本直樹先生、住田昌治先生、島谷千春課長にも感謝申し上げます。
そして、中原先生。いつも様々な舞台を用意してくださり、ありがとうございます。今回の舞台は、これまでで最もハードだった気もしますが、一方で一番充実していたようにも思います。そして最後の最後に辻さん。執筆プロセス、楽しかったです。ありがとうございました!これからもしばらく、一緒に頑張りましょう!!

 

 

【関連するサイト】

・辻さんのブログ
http://www.tsuji-lab.net/entry/2019/02/14/073000?fbclid=IwAR1OaFuvhU_ESZ8UeCOR8jxnxi95fTrI_Vl6Jo9OUFvsLeBPLx-IpBiT1RU

・横浜市教育委員会×中原淳研究室 共同研究のページ
http://www.edu.city.yokohama.jp/tr/ky/k-center/nakahara-lab/index.html

 

【おまけ】

・昨日、池袋のジュンク堂にいったら、すでに並べてありました

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